名古屋市内、閑静な住宅街の古い戸建賃貸住宅に住んでいた私達。
家は古く決して住みやすいとは言えないながら、会社を辞めて独立したばかりで仕事も不安定ながら、日々は楽しく過ごしていきたいとそんな思いから、
大家さんの許可をいただき家の裏の空き地を開墾し畑を始め、
DIYで家をアレンジし、
ピザ窯を作り、
庭で炭を起こして炭焼き料理を楽しみ、
自作のデッキで毎朝自家焙煎のコーヒーを楽しみ、
家で採れる果樹や野菜を調理したり加工したり、
そんな日々の生活はたいしてお金をかけずともどこか贅沢感にあふれていて『古民家贅たく研究所』として気ままにブログに綴ることをしていました。
それでもやっぱり都会でできる田舎暮らしの真似事ではない本当の田舎暮らしをしたい、いつか退去する賃貸ではなく大事に手を入れながらこの先一緒に歳を重ねていける家に住みたいという思いは強く、またDIYにしても庭で炭を起こしての食事にしても密接した住宅地では周り近所に音や匂いや煙といった必要な配慮を自分たちのやりたいことが上回ってしまって、もうここではキャパオーバーだ!という限界も感じ、地方移住を検討するようになりました。
とはいえお互いの仕事のこと、これまでにできた交友関係のこと、今後どういう生活を送っていくのか、考えることはたくさんありました。
でもまず家が決まらないことには先のビジョンも見えにくい、愛知県中心に近隣県も含め空き家バンクのサイトをチェックし始めました。それが移住から約3年前。
いろいろと見ていくうちに自分たちの譲れない条件などが明確になってきました。
うちの場合、
・名古屋市内まで片道1時間半以内
・大規模すぎない畑がある
・お互いの仕事部屋と客間が取れる
・隣家が近すぎない
・現状住める状態である
といった感じ。その他欲を言えばいくらでも出てきてしまうので絶対条件を絞りました。
そうするとエリア的に好条件なのが豊田市でした。
豊田市というと都市とは言わないまでも程よい街感がありますが、2005年の市町村合併で大幅に山間地域が増え、理想の田舎暮らしができそうな地域がたくさんあります。
その上で地域的に過疎化の進む場所はあれど市全体としては人口もいるので道路や交通インフラもしっかりしているし市町村崩壊などの危機も早々にはないかな…という安心感。
移住者や山間地域を盛り上げようという動きも盛んに感じました。
などなど調べた結果物件探しを豊田市に絞って気に入った物件が出たときにすぐに応募できるように空き家バンクにも登録し、途中気になった物件の見学をさせてもらったり、
日々物件をチェックしながら待つこと2年。
来ました!理想の物件!!
広い家、家の前に広がる畑、離れとガレージに蔵もあるし裏には山もある。
日当たりの良い南向きで隣家も程よく離れてやりたいことは思い切りやれそう!
もう可能性の宝庫!
築50年程で古民家とは言い難いけど、その分家の状態はよく大掛かりに手を入れる必要なく住める状態で、豊田市の中でも北に位置する小原地区、住んでいた名古屋の家から1時間切って行ける距離でした。
即問い合わせをして見学させてもらうことに。
現地に行ってみると家主さんの息子さんご夫婦が迎えてくれて、家の外や中の各部屋を丁寧に案内してくれました。とても話しやすく、これまで名古屋の家でやってきたことから移住を希望するに至った経緯、仕事のことなどをお話し、逆にここに住むメリット・デメリットなど住んでいた方ならではのお話もお聞きすることができました。
で、家に帰って真剣に会議。
いや、もうこれ以上の物件が出てくるなんてそうそうない事はわかってはいるものの、自分で望んだことが目の前にやっと現れたんだと思うものの、今までの生活をガラッと変える移住の決断をするのってやっぱり勇気がいりました。不安なことに目を向けたらそりゃ分からないことだらけの田舎暮らし、本当にやっていける?という思いに負けそうになります。
でもそこはこの人に会うまで無難に平穏な道を歩んできた私とは打って変わって波乱万丈な人生を送ってきている相棒ますたぁ、
『もういいじゃん、行こうよ。絶対楽しいよ。とりあえず決まるかどうかもわかんないしさ、申し込みしよ。』
と。潔いな…
そんなますたぁに背中を押され決意を固め、申込用紙を支所に送付しました。
そう、申込みをしたからってうちに決まるとは限らない。これだけ好条件の物件、コロナの影響でリモートも進み地方移住もちょっとしたブーム、見学だけで8組、申込みはうちを含めて4組あったとのこと。
豊田市は山間地域への移住には地域面談があります。その地区の区長、町内会長、町内住民、家主さん、仲介業者さん、支所の地域課の方々がずらりと囲む中、一組づつ会場に入り事前にもらっていた資料に沿って希望の動機や移住したらやりたいことなどプレゼンタイムがスタート。
その結果参加者の意見を参考に最終家主さんが入居者を決定する方式です。
当日は途中辞退の希望者もいたので最終二組でのプレゼン決戦!笑
仕事でも少人数机を挟んでの打ち合わせはよくやってるけどみんなが一斉にこっちを見てる中でのプレゼンなんて慣れてない!!
異常に緊張し、ドギマギし、とてもプレゼンとしてはうまくなかったけど、皆さんにこやかに優しく見守り、時には私の話に笑ってくれたりすごくあたたかな雰囲気だったので、単に私が気を張りすぎたのかな、と。でも希望を言うならもうちょっと一方的プレゼン方式じゃなく対話形式だったらもうちょっと緊張もほぐれて自分らしく話せたかな…
そんな、勝手に緊張しすぎて胃がキリキリするような状況を終え、あとは結果を待ちます。
結果は数日後、支所から電話できました。うちに決まりました、と。
わーーーーーーーい!
その日はとにかく嬉しくて二人で祝杯をあげました。
その後は忙しくバタバタと打ち合わせなどが始まります。
うちはいずれ購入する意思がある前提でまずは賃貸で、という条件だったので仲介業者さんを挟んで賃貸契約の話、
その時点でまだ家具など残っている状態だったのですが、うちが必要なものを残して家主さん側で処分してくださるというありがたいお話だったので必要な家具と処分する家具の仕分けを一緒にして、
更に空き家バンク登録の物件には家の補修にかかる費用の補助金が出るので業者さんを交えて住み始める前にどうしても補修の必要な箇所の工事打ち合わせ、
などなど。
それと並行して住んでいた名古屋の家の引越し準備。
これまで車1台を二人で乗ってましたが絶対1台づつ必要になるだろうと車も購入。
あと、これは豊田市特有だと思いますがとても素敵な取り組みがあって、空き家の片付けを地域の方がボランティアで手伝ってくれるというイベントを開催してもらえます。
細かな食器や衣類などは家主さんご家族が時間をかけて片付けをしてくださったのですが、大きな家具などもたくさんあり、そういったものの搬出にはやっぱり人手が必要。
うちの片付けイベントには10数人の有志が集まってくれて、大量にあった家財の搬出も3時間の予定がなんと1時間で終了。
一緒に片付けをすることで地域の方たちと交流もできて、参加者は処分するものの中で欲しいものがあれば持ち帰ってOK。本当にありがたい、良い取り組みだと思います。
家主さんご家族と相談の上、6月末に地域面談の結果が出て、余裕を持って11月入居にしましょうとなったのですが、その間仕事も建て込みあっという間の4ヶ月。
10月の末に鍵を受け取り、念願叶って山間地域に『自分の家』ができたわけなのですが、住居兼事務所でもある家の引っ越し、私の仕事道具や材料、機材もあって更にはこれまでふんだんにやってきたDIYの工具や資材なども大量にある…
仕事の状況も読みきれないところがあって名古屋の家を年末退去と決め、2ヶ月かけて自分たちで行ける時に荷物を運ぼう、と業者に頼まず引っ越しすることにしました。
ものづくり職業の私とモノ多い多趣味人の相棒、まーー引っ越しは大変でした。
一体この2ヶ月で何往復したんだろう…
しかも最終名古屋の家の片付けも大詰めの12月に入って二人揃ってコロナ感染するわ、クリスマスには異例の積雪になるわどうなることかと思いましたが、なんとか無事に退去立会の日に間に合って引っ越しが完了!
独立から仕事が軌道に乗るまで長い時間を過ごしてきた、そして私達の楽しい生活とこの先のきっかけを作ってくれた名古屋の家も本当にありがとう!
晴れて年明けから完全移住となりました!
長くなりましたが私達の移住に至る経緯はこんな感じ。
でも本当に私達が恵まれたなぁと思うのは、大家さん、ご近所さん、仲介業者さん、工事業者さん、関わる人がみんなみんな本当ーに良い方ばかり。そればかりは運に任せるしかないところかもしれませんが、その後の生活にも大きく関わることなので、家の状態や立地条件だけでなくその地域の雰囲気や人が自分に合っているかはすごく大事なことだと思いました。
移住を検討されている方に、ほんの少しでも参考になれば嬉しいです。
あ、これまで『古民家贅たく研究所』としてブログ等々やってきましたが、移住して来てみて裏山を持ち、現状と諸々お話を聞いたり勉強に出かけてみたりとしてるうちに、これはもう家だけの話じゃない!山も含めた里山暮らしそのものの問題であって恵みであって贅沢を追求すべきことだ!と移住1ヶ月にして思い至り、『里山贅たく研究所』と名前も改め気分も一新ブログもリスタートすることにいたしました。
これからも新しくなった里山贅たく研究所をよろしくお願いします。
ではまた!